ここは、60代後半のよぼよぼのオバサンがやっているのですが、
いつ行ってもお客は誰もいないスナックで
それでいて潰れないという不思議なスナックです。
不思議なスナックなので来るお客も不思議なお客が
多いようです。
( 不思議なスナックです 多分
僕は狸に化かされているのでしょう )
昨日は僕らが行ったら珍しく、お客が一人いました。
黒いズボンに、白いだぶだぶのワイシャツ。
年は40歳くらい。
僕らが入ると、彼は慌てるように
オバサンに 「 お勘定 」と言って帰ろうとします。
オバサンは
「えーと 800円ね 」
かれは、安すぎるので悪いと思ったのか、
「 じゃあもう一杯飲むよ 」
と言って、新しい水割りを注文しました。
あまりにも雰囲気が暗いので、
僕らは彼に
「 カラオケでも歌いませんか?
どんな歌が好きなんです? 」
「 昭和の唄が好きです 」
と言って、彼はジュリーの曲を歌って
少し笑顔を見せる様になりました。
でも、すぐに勘定をして帰ってゆきました。
オバサンが言うには、彼は10年くらい来ているけど
いつも黙って飲んで帰るだけらしい。
でも、酔っぱらうと手が付けられなくなって、
他のスナックは出入り禁止だとか。
49歳で独身、仕事はしていない。
家が歯医者さんなので、お金には不自由していないらしい。
お父さんが物凄く厳しい、家庭だったと。
母親は早くに亡くなって、
お姉さんは自殺したとか。
スナックのオバサンの情報収集力には驚かされます。
多分彼は友達もいなくて、孤独で、人と接するのを
避けている生活を送っているのだと思います。
でも、話してみると優しくて純粋な人のようです。
小学生によくこういう子がいますよね。
大人しくて、真面目で、優しくて
人と接するのが苦手で、だから
友達もあまりいない。
彼はそのまま大人になったような感じでした。
でも、世の中はそういう子どもは損をするようです。
世の中は、人付き合いがうまくて、小利口で
周りの空気が読めてそれに合わせることが出来て、
ずるくて、人を裏切ってもすぐに立ち直れて、
嘘はつきたくないけど、小さな嘘はよくついて
人には嫌われたくないけど、人の事をしばしば
嫌いになる。
こんな人達が世の中ではうまく行くのであれば
昨夜の彼はその対極にいるようです。
彼が帰った後、しばらく彼の事が気になりました。
今からどこに行くのかな、家に帰るのかな、
毎日どうしてるんだろう。
そう思いつつ、吉田拓郎の唄を歌うのであります。
♪ 悲しいだろう、みんな同じさ
同じ夜を迎えてる・・・・・♪